Lesson6-1 コーヒーの栄養学

コーヒーの様々な恩恵

カフェインとクロロゲン酸

コーヒーに含まれる成分の代表選手といえばカフェインです。
コーヒーは眠気を覚まし、勉強や仕事の集中力を高めてくれますが、
これらはすべてカフェインの効果によるものです。

しかし、コーヒーをコーヒーたらしめている成分として、
もうひとつ忘れてはならないのがクロロゲン酸です。
クロロゲン酸はコーヒーで初めて単離された成分で、カフェイン以上に多く含まれ、
コーヒー独特の風味や健康効果に大きく関わっています。
恐らくあと数年か数十年もすれば、「コーヒーの成分で最も代表的なものはクロロゲン酸」と
カフェインに代わって言われる時代が来るのではないでしょうか。

Lesson6ではコーヒーを科学的に分析し、
2つの代表的成分であるカフェインとクロロゲン酸を中心に、
その素晴らしい健康効果について学習をすすめていきましょう。

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生豆に含まれる成分

コーヒーにはまだ科学で解明されていないものも含め、
細かく分けると100種類以上の成分が含まれていると言われています。

これらの成分は品種・産地・精製方法によってばらつきがあります。
成分比の違いは焙煎したときの色の変化や、コーヒーとして飲んだ時の味や香りの違いに大きく影響しています。

全体としてアラビカ種のほうが香りが良くロブスタ種のほうが苦味の強いコーヒーになることが、
成分の違いにはっきり表れているのが解ります。

アラビカ種の成分表

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ロブスタ種の成分表

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※コーヒーの生豆にはだいたい9〜13%の割合で水分が含まれていますが、
これらの成分表は生豆から水分を取り除いた状態での割合ですので、
総重量に対する比率ではありません。

【多糖類】

「糖」と言っても砂糖のことではなく、炭水化物の仲間です。
植物の組織を構成している繊維質などがこれにあたります。

【タンパク質】

大豆などに含まれるものと同じ、植物性タンパク質の一種です。
コーヒーの複雑な香りや苦味成分の元にもなっています。

【脂質】

リノール酸、パルミチン酸などで構成され、コーヒーの香ばしい風味の元にもなっています。

【少糖類】

ショ糖などの糖分を指します。
焙煎することでかなり量が減りますので、コーヒーの甘味成分と言われているものとは違いますが、
焙煎してカラメル化を起こすことによってキャラメルやバターのような香ばしい風味につながります。

また、タンパク質などと調和してフルーティーな香りやナッツの香りを放ちます。

【クロロゲン酸】

コーヒーで初めて単離された成分で、ポリフェノールの一種です。
コーヒー酸とキナ酸が結合した物質なのですが、この結合の仕方で10種類以上の仲間があり、
それらをまとめて「クロロゲン酸類」と言っています。

これは、香りや苦味成分の元にもなっています。
抗酸化作用があり、この効果が様々な健康効果をもたらすということで近年大きく注目されています。

【カフェイン】

クロロゲン酸と並んでコーヒーの「効果」を支える重要な要素のひとつです。
ごくわずかですが、コーヒーの複雑な苦味成分の元にもなっています。

【アミノ酸】

アスパラギン酸、グルタミン酸など複数の種類から成り、
ショ糖やタンパク質などと調和してコーヒーの香ばしい風味につながっています。

【その他】

クエン酸、リンゴ酸、リン酸など、その他にも様々な成分が含まれています。

MrPuiPhotography/Shutterstock.com
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コーヒーコラム

ゲーテとコーヒーとカフェインの意外な関係

『若きウェルテルの悩み』や『ファウスト』などで有名な
ドイツの文豪ゲーテは大のコーヒー好きでした。

ゲーテは1786年から1788年までのイタリア旅行の際、
ヴェニスのカフェ・フロオーリアンやローマのカフェ・グレコなどのカフェに通い、
自国ドイツで飲んでいるコーヒーと比べてイタリアのコーヒーがとても濃いので、
飲みすぎると刺激が強すぎて体に悪いのではないかと考えるようになりました。

その後、1819年にゲーテは友人の化学者デーベライナーに
若い植物化学を研究しているルンゲを紹介されました。
そこでゲーテはルンゲに貴重なアラビア産のコーヒー豆をプレゼントし、
「ひとつこのコーヒーに含まれているであろう覚醒作用を引き起こす成分を研究してみてはくれないか」と提案したのです。

その数ヶ月後、ルンゲは見事に世界で初めてコーヒーからその成分を抽出することに成功し、
その成分にコーヒー(カフェ)から「カフェイン」と名付けました。
ゲーテがカフェインの発見に一役買っていたというお話ですが、
そのきっかけになったという、ゲーテがイタリア滞在時に通ったカフェは現在も営業しています。

カフェ・フローリアン

イタリア最古のカフェ(1720年創業)。
ゲーテの他にも、バイロン、ディケンズ、カサノバ、プルーストなどが訪れたと言います。

カフェ・グレコ

イタリアで2番目に古いカフェです(1760年創業)。
ゲーテの他にも、スタンダール、アンデルセン、イプセン、リスト、メンデルスゾーンなどが訪れたと言います。