Lesson9-3 エスプレッソの抽出工程とエスプレッソレシピ

エスプレッソの抽出工程

細かい抽出方法はマシンによって異なりますが、基本的な部分は共通しています。
ここでは大まかな工程を把握しておきましょう。

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①お湯の空だし

抽出作業の前に空出を行います。
抽出口を温めることで抽出液の温度が下がりにくくなり、また付着物の洗浄にも必要な第一段階です。

②グラインダーで豆を挽く

専用の極細挽き機械であるグラインダーで豆を挽きます。
引いた豆はポルタフィルターに落としていきますが、この時まんべんなく落とすことがポイントです。
この工程をドーシングと言います。

ポールフィルタ
ポルタフィルター

③豆をならす

ポルタフィルターに落とした豆をならしながらすりきりをします。
この作業はレベリングといい、ポルタフィルター内の豆の密度を均一にするための下ごしらえです。

④豆を押し固める

レベリングしたポルタフィルターの豆を押し固める工程をタンピングといいます。
この強弱により味が変化するため、簡単に見えますが技術が必要な工程です。
一定の圧力をかける必要があります。

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⑤マシンにセットする

豆を詰めたポルタフィルターをマシンにセットします。
蒸気がもれたりはずれたりしないように正しくしっかりとセットすることが大切です。

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⑥抽出

抽出を開始します。
抽出状態を確認しながら、量と時間に気を配り、目的量に達したら抽出を止めます。

おいしいエスプレッソのための4つのポイント

①気圧

  • エスプレッソを抽出するポンプ圧は9気圧が最適とされます。マシンではこの圧力を適切に豆にかけることが大切です。
  • 圧力が高すぎると、苦味や焦げ臭さ、雑味成分が出やすくなり、低すぎると酸味や風味が弱くなります。

②湯温

  • エスプレッソを抽出する湯温は92度前後となります。バリスタによっては、豆の焙煎度合いにより微妙に変えている場合もあります。
  • 高すぎると苦味や焦げ臭さ、雑味成分が出やすくなり、低すぎると風味やクレマがでにくくなります。

③抽出量

  • 一般的には25~30mlがおいしいエスプレッソを抽出できる量とされています。
  • エスプレッソの美味しさの秘密は乳化現象にあります。乳化現象が終了する直前に抽出を止めると、丁度25~30mlのエスプレッソソロになります。

④抽出時間

  • エスプレッソの抽出時間と抽出液の量は、使用するコーヒーの粉量や挽き具合によって変化します。ダンピングが一定であることが抽出時間を安定させる大切なポイントとなります。
  • エスプレッソソロの抽出時間の目安は20~30秒で、これを目安に抽出します。
  • 乳化が終了した後に抽出される液体は、色がそれまでと変化するため、それを目安にしてもよいでしょう。
  • 時間経過によって大きく3つに分けられます。①最初は酸味成分②次に甘み成分③最後に渋みや苦味成分が抽出されてきます。③の苦味の段階になると、抽出液の色みが変化するので見た目でも把握することができます。

クレマ

エスプレッソの美味しさ要素の一つとして重要なのが、このクレマです。

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クレマとは

エスプレッソを抽出した際に浮かぶ明るい茶色の泡の層で、トラの毛並みに似た模様からタイガースキンとも呼ばれています。
クレマにはエスプレッソの香りを閉じ込めたり、保温したり、口当たりを柔らかくするなど、おいしいエスプレッソのための重要な役割を果たしています。

良いクレマかどうかの確認ポイント

上質なクレマの条件

  • 厚みがありキメが細かい
  • なかなか消えない
  • 抽出に失敗するとクレマの層は薄く、キメがあらく消えやすい

エスプレッソで重要な役割を果たすクレマには「質」があります。
上質なクレマは美味しさのために必要ですが、質が悪ければその役割も半減してしまいます。
どのような状態が良いクレマなのか、見極める方法を覚えておきましょう。

①粉の状態

抽出後のポルタフィルターを確認することで、
エスプレッソの抽出が成功したかどうかを確認することができます。
ひっくり返して粉を落とした際に、全体に水分が行き渡り色ムラや型崩れがないケーキ状なら、
抽出はきちんと行われている証拠となります。

②かき混ぜても消えない

厚みがありキメが細かいクレマはかき混ぜても消えません
また、飲み終わってもカップの底に残ることも上質なクレマの証明となります。
このようなクレマは、口当たりの柔らかさを最後まで感じられます。

③クレマの上に砂糖が浮かぶ

良いクレマは砂糖をのせても一気に沈みません。
砂糖を一旦受け止めてから吸い込まれるように沈んでいくのが特徴です。

おいしいエスプレッソを楽しむ

エスプレッソ・ソロ

一般的にエスプレッソと呼ばれているものは、エスプレッソ・ソロで、
これがしっかり淹れられることがバリスタとしての第一歩です。
ソロはエスプレッソアレンジメニューにも用いられるものです。
美味しく飲むためには、抽出後なるべく早く飲むようにするとよいでしょう。

ポイント

  • 抽出プロセスは基本通りシンプルである。
  • 丁寧さと手際のよさ、正確さが求められる。
  • 抽出をはじめてすぐは抽出が安定しないため、カップと抽出口の位置関係を把握する。

材料と抽出方法(1杯分)

■エスプレッソ用コーヒー豆・・・10g

  1. コーヒー豆を詰めたホルダーをマシーンにセットする。
  2. 抽出ボタンを押す。
  3. 抽出量を確認しながら適量(25~30ml)で抽出を止める

エスプレッソ・ドッピオ

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ソロの2杯分の分量のエスプレッソがドッピオで、英語でダブルの意味となります。
ダブル用のポルタフィルターを用いて2杯分の量を同時に抽出します。

ポイント

  • ダブル用のポルタフィルターの抽出口にしっかりとデミタスカップをセットする。
  • 抽出量や抽出時間に気を配る。

材料と抽出方法(1杯分)

■エスプレッソ用コーヒー豆・・・20g

  1. コーヒー豆を詰めたダブル用のホルダーをマシーンにセットする。
  2. 2つの抽出口から出てくる抽出液をこぼさないようにセットして抽出ボタンを押す。
  3. 抽出量を確認しながら適量(25~60ml)で抽出を止める

エスプレッソ・ルンゴ

ソロと同じ豆量で約倍量を抽出したものが、エスプレッソ・ルンゴです。
エスプレッソとの違いはその口当たりで、ソロに比べてエスプレッソ独特の
クリーミーさはなくなりますが、その分口当たりが優しくなるのが特徴です。

ポイント

  • 抽出方法にはいくつかの方法がある。
  • 2倍の時間をかけて抽出する場合には、抽出時間による味の変化に気を配る。
  • 抽出後半は渋みや苦味成分が出るので、抽出しすぎないようにする。
  • 僅かな時間の差で味が微妙に変化する。

材料・抽出量(1杯分)

■エスプレッソ用コーヒー豆・・・10g

  1. コーヒー豆を詰めたホルダーをマシーンにセットする。
  2. 抽出ボタンを押す。
  3. 抽出量を確認しながら適量(50~60ml)で抽出を止める

エスプレッソ・リスレット

ソロと同じ豆量で、約半量を抽出したものがエスプレッソ・リスレットです。
ソロよりもエスプレッソ独特のクリーミーさが強調されるのが特徴で、
独特のうま味が感じやすくなり、より一層エスプレッソらしさを楽しむことができます。
抽出液自体はソロに比べて濃くなりますが、後味がさっぱりしています。

ポイント

  • 抽出時間と抽出量に注意する。
  • 苦味成分が出てくるかどうかのタイミングで抽出を止める。
  • 抽出時間が短いことにより、クリーミーさと甘みが強調される。

材料と抽出方法(1杯分)

■エスプレッソ用コーヒー豆・・・10g

  1. コーヒー豆を詰めたホルダーをマシーンにセットする。
  2. 抽出ボタンを押す。
  3. 抽出量を確認しながら適量(約15ml)で抽出を止める

アメリカーノ

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エスプレッソ・ソロをお湯で割ったものがアメリカーノです。
エスプレッソをお湯で薄めると通常のコーヒーと同じになってしまうような気がしますが、
エスプレッソのコクやうま味は消えずに深い味わいとなります。
ドリップ式のアメリカンコーヒーに比べてカフェインの量が少ないのも特徴の一つです。

ポイント

  • 約3倍量のお湯で割るのが基本。
  • 味を決めるのはクレマがしっかりとした基本のエスプレッソである。
  • エスプレッソ・ソロをしっかりと淹れることがおいしいアメリカーノのポイント。

材料・抽出方法(1杯分)

■エスプレッソ用コーヒー豆・・・10g
■湯・・・120ml

  1. コーヒー豆を詰めたホルダーをマシーンにセットする。
  2. カプチーノ用のカップを用意してセットし、抽出ボタンを押す。
  3. 抽出量を確認しながら適量(25~30ml)のエスプレッソ・ソロを抽出する。
  4. マシンについている給油ノズルでお湯でお湯を注ぐ。