アフリカ・中東エリア
コーヒーが誕生し、最初に広まった地域がこのエリアです。
アラビカ種とロブスタ種の両方を生産しており、
エチオピア、ケニア、タンザニアはアラビカ種が多く、それ以外の国はロブスタ種が中心です。
野生種でコーヒーを作っているところもあり、ここ十数年における農協製の発達など、
スペシャルティコーヒーで注目度が上がっているエリアです。
味の傾向としては、上品でフルーティーな香り、野生的なコクが特徴です。
アフリカ・中東エリア
- ケニア
- エチオピア
- タンザニア
- イエメン
- ルワンダ
ケニア
スペシャルティコーヒーで注目が集まっているケニア産コーヒー。
毎年ケニアから出品された豆がオークションで話題になり、ヨーロッパでは第一級品として扱われています。

特徴
ケニア産コーヒーのクオリティの高さの理由は、世界でも早い時期に
「コーヒー研究財団(Coffee Research Foundation)」などの機関を立ち上げ、
コーヒーの品種改良および管理システムを確立していたことが挙げられます。
コーヒー研究財団はコーヒー生産者の出資で運営されており、生産から流通まで全てを管理しています。

ケニア特産の品種としてSL28やSL34がよく知られており、
SL28の素晴らしい香味はケニア産コーヒーの特色を打ち出しています。
SLはこれらの品種を開発した当時ナイロビにあったコーヒー研究機関「スコットラボラトリー」のイニシャルからきています。
産地と気候
名高い産地はケニア山付近に集中しており、雨季が年2回あるので収穫時期も2回訪れます。
11月〜3月にかけて収穫されるメインクロップと、6月から8月にかけて収穫されるサブクロップに分かれ、とりわけメインクロップの質が高いと言われています。
コーヒーデータ
- 主な栽培品種:ブルボン、ティピカ、SL28、SL34
- 主な精製方法:ウォッシュト
- 主な産地:エンブ、ニエリ、キリニャガ、ルイル、ティカ、メル
- 主な豆の銘柄と味:
- [ケニアAA]高貴な香り、フルーティーな酸味と甘味。
- [ケニア・キアンプ]ほのかな酸味、フルーティーな香りと甘味。
- [ケニア・マサイ]ニエリ、キリニャガ産。フローラルな香り、さわやかな酸味。
共同精製工場でのハンドピック選別
アフリカのコーヒー生産国の多くでは、地域の小規模農家が利用する共同精製工場が設けられ、
農協単位でコーヒー豆の処理が行われます。
農協名はそのままコーヒー豆の銘柄として販売されるものがあります。
ケニアの有名なコーヒー生産地のひとつニエリ地区には
「テグ」「カラゴト」「ングングル」の3カ所があり、
ハンドピックで完熟・未熟果実を取り除いています。

エチオピア
エチオピアはコーヒー生産国としては珍しく、コーヒー消費量も多い国で、
生産量の4割が国内で消費されています。

特徴
「モカ」の銘柄で知られるエチオピアはコーヒー発祥の地にふさわしく、
限りなく自然に近いコーヒー栽培と伝統的な処理方法が特徴です。
他のコーヒー生産国のような人工的な農園は全体の1〜2割程で、
ほとんどは小規模の農家が周囲の環境で他の農作物と一緒に栽培をしているか、
自然に自生しているコーヒーノキからチェリーを収穫しています。

品種と製法
品種は最も原種に近いティピカをはじめ、3500種以上あると言われる在来品種から栽培されています。精製方法は伝統的なナチュラルが主流ですが、南部のイルガチェフェ周辺ではウォッシュト精製も増えてきています。
「カリオモン」というコーヒーセレモニー(コーヒーを淹れる際の作法・日本の茶道に似た習慣)は
特に有名です。
コーヒーデータ
- 主な栽培品種:ティピカ、在来品種
- 主な精製方法:ナチュラル、ウォッシュト
- 主な産地:アディスアベバ、ハラー、イルガチェフェ
- 主な豆の銘柄と味:
- [エチオピアン・モカ]甘くスパイシーな香り、豊かなコク。
- [エチオピア・ハラー]フルーティーな香り、上品な酸味。
- [エチオピア・イルガチェフ G1]レモンティーのような香り。
コーヒーの語源とも言われるカッファ州
エチオピアの南西部にあるカッファ州はコーヒーの語源になったという説もあるコーヒー発祥の地。
ここの森林では現在も自然のコーヒーノキから収穫が行われています。
タンザニア
キリマンジャロの銘柄で知られるタンザニアのコーヒー栽培は、
雨量が多く良質な火山性の土壌に恵まれた、豊かな自然に支えられています。

特徴
農地が1〜2ヘクタール程度の小規模農家が全体の9割以上を占めています。
近年セントラル・パルパリー・ユニット(CPU)という区分けが設けられ、
CPU単位でウォッシュト精製処理を行うようになってから、
生産性と品質が向上し、農家の収益アップにつながっています。
品種はほとんどがアラビカ種ですが、北西部のブコバなどではロブスタ種も栽培されています。
グレードはスクリーンサイズで決められており、AAが最高級グレードとなっています。

コーヒーデータ
- 主な栽培品種:ブルボン、ケント
- 主な精製方法:ウォッシュト
- 主な産地:アルーシャ、モシ、ムベヤ、ムビンガ、キゴマ、ブコバ
- 主な豆の銘柄と味:
[キリマンジャロAA]最高級品。フルーティーな酸味、豊かな香りとコク。
キリマンジャロ
キリマンジャロのブランド名が付けられるのは主に「アルーシャ」「モシ」で生産されたものです。
イエメン
「モカ・マタリ」の銘柄で古くから親しまれているイエメンは、
エチオピアと並ぶコーヒーの歴史が古い国です。

特徴
「マタリ」とは代表的なコーヒーの生産地であるバニマタル地方に由来しています。
バニマタル地方の他にはハラズ(ハラジ)、ハイマなどが有名で、この3地方を総称してサナニとも呼ばれています。
また、この3つの地域の豆を集めてイエメンコーヒープロセッシング社が処理したものが
「アルマッカ」のブランド名でも流通しています。
生産は小規模な農家が中心です。
品種はエチオピアからもたらされた原種を起源とした在来種が多く残っています。
コーヒーデータ
- 主な栽培品種:在来品種、ティピカ、ブルボン
- 主な精製方法:ナチュラル
- 主な産地:ハラズ(ハラジ)、バニマタル、ハイマ
- 主な豆の銘柄と味:
- [イエメン・モカ・マタリ]フルーティーな香りと酸味。ワインのような豊かなコク。
- [イエメン・モカ・アルマッカ]フルーティーな香りとコク。豊かな風味。
「テラス」と「ワディ」
イエメンでは「テラス」と「ワディ」という2つの農法によってコーヒーが栽培されています。
テラスは標高2000mの高地の斜面を利用した棚畑、ワディは山岳地帯の峡谷の涸れ川を利用したものです。

ルワンダ
「千の丘の国」と言われるルワンダは、最も低い地域でも標高1000m以上ある豊かな山岳の国です。
コーヒー栽培の中心は主に標高1500m〜2000mの地域で、大規模な農園は無く、
四国と九州の中間くらいの国土に、約50万件の小規模な農家がひしめいています。

歴史
ルワンダのコーヒー栽培は植民地時代に外貨獲得の政策として
各農家に70本のコーヒーノキの栽培が義務付けられたのがはじまりで、
現在は1軒あたり200本のコーヒーノキを栽培しています。
特徴
2000年くらいから米国の援助で
各地域に生産処理場(ウォッシング・ステーション)が次々と建設され、
精製処理がナチュラルからウォッシュトに変わってきたことで品質が向上しました。
2004年頃から世界のマーケットで注目されるようになり、
現在は国内の作物で最大生産量、総輸出額の25%を担う重要な産業に発展しています。
コーヒーデータ
- 主な栽培品種:ブルボン
- 主な精製方法:ウォッシュト
- 主な産地:カレンゲラ、ブコニャ
- 主な豆の銘柄と味:
[ルワンダ・マラバ]フルーティーな酸味と甘味。クリーミーな風味。
コーヒー生産は女性や孤児が中心のルワンダ
ルワンダは1994年のジェノサイドで人口の約1割(百万人)もの国民を失い、
成人男性が少なく、コーヒー生産に従事する人たちは女性や孤児が多数を占めています。