Lesson1では、そもそもコーヒーとは何なのか、そしてそれはどこでどのように作られ、
どういう過程を経てコーヒー豆となって私たちの元に届くのか、
そういったコーヒーの基本的内容を学習していきます。
学習の最初の一歩は、植物としてのコーヒーの実態を知ることからはじめていきましょう。

コーヒーチェリー
コーヒー「豆」というからにはマメ科の一種だと思われてしまいがちですが、
正式にはアカネ科コフィア属(コーヒーノキ属とも言われている)の常緑樹
「コーヒーノキ」に生るフルーツの種子です。
コーヒーノキの実は赤くサクランボに似ているので「コーヒーチェリー」と呼ばれています
コーヒーチェリーについて
コーヒーチェリーはフルーツであり、果肉は食べることができます。
その味は甘く、コーヒーノキが最初に発見された当初、人間はこの果肉を食べていました。
その後、コーヒーの種子を煮出して飲むようになり、15世紀頃から現在のように
豆を煎って粉に挽いたものを煎じて飲むようになったという歴史を持ちます。
コーヒーチェリーの果肉は少なく、これ自体が食物として流通することはありません。
現地のコーヒー農園では、収穫を手伝う子供たちがおやつ代わりに
つまみ食いしたりすることもありますが、通常は種子を取り出した後は捨てられるか、
新たなコーヒー栽培の肥料などになります。
特殊な例としては、エチオピアやイエメンなどで果肉を乾燥させ煎じて飲むお茶があります。

品種によっては黄色い実が生ることもあります。

コーヒーチェリーの断面図

コーヒーチェリーは複雑な構造をしています。
外側から、まず外皮があり、果肉があります。
その内側にすぐ種子があるように見えますが、層構造は続きます。
種子のまわりは「シルバースキン」と「パーチメント」という2重の薄皮で保護され、
さらにその周囲を「ミシュレージ」と呼ばれるネットリしたペクチン層の粘質物が覆っています。
コーヒーチェリーの多重構造
- センターカット
- 生豆
- シルバースキン(銀皮)
- パーチメント(内果皮)
- ミシュレージ(粘質物)
- 果肉
- 外皮

これら多重構造の中心に、
コーヒー豆の元になる種子が2つずつ、向かい合うように収まっています。
種子どうしが向かい合った平たい部分の中央を走っている溝は「センターカット」と呼ばれます。
外皮、果肉、ミシュレージ、パーチメント、シルバースキンを取り除き、
種子のみになった状態のものを『生豆(なままめ)』と呼びます。
「きまめ」と読んでも間違いではありませんが、
コーヒー業界では「なままめ」という呼び方が一般的です。
この生豆を乾燥させて焙煎したものがコーヒー豆になります。
生豆は薄緑色をしているので英語では「グリーンコーヒー(Green Coffee)」と呼ばれています。

フラットビーンとピーベリー
コーヒーチェリーには片方の種子がうまく育たなかったことにより、
5〜20%くらいのまれな確率で種子が一つだけしか入っていないものがあります。
通常の2つ揃ったコーヒー豆が、向かい合う面が平らなことから
『フラットビーン』と呼ばれるのに対して、
1つだけしかないものは形が丸いので『ピーベリー(丸豆)』と呼ばれます。

コーヒーの栽培条件
コーヒーが育つ気候や土地には、いくつかの条件があります。
暑い熱帯の気候で育つイメージがありますが、
コーヒーという植物は気難しい部分を持ちあわせており、
太陽と土があればどこでも実を結んでくれるというわけではありません。
コーヒーが好む気候
基本的にコーヒーノキは赤道付近の温暖な気候でしか栽培できない熱帯植物です。
寒さはもちろん苦手ですが、品種によっては暑すぎるのも苦手です。
理想は平均気温が20度前後あり、しかも昼夜や年間で適度な温度差があること、
年間雨量が平均1500mm以上あることが必要になります。
土は有機物を多く含む水はけの良い肥沃土が好ましく、火山性の土壌が最も適切だとされています。
このため、コーヒー農園は山域に多く分布し、
生産地や品種によっては標高が高いところで栽培されたものほど
コーヒーの品質が高いとされています。
また、コーヒーは霜に弱く、霜が降りるようなところでも栽培できません。
ブラジルなどでは過去にコーヒー農園が霜によって大きな被害を受けたこともあります。
コーヒー栽培に必要な条件
- 赤道付近の温暖な気候
- 平均気温が20度前後あり、昼夜や年間で適度な温度差があること
- 年間雨量が平均1500mm以上あること
- 土は有機物を多く含む水はけの良い肥沃土
- 霜が降りない地域
コーヒーベルト
以上の条件を満たしているのが赤道を中心に南緯25度、北緯25度の地域。
このエリアは「コーヒーベルト」、または「コーヒーゾーン」と呼ばれています。

ブラジル、コロンビア、エチオピア、ジャマイカ、ハワイ、ケニア、
イエメン、インドネシア、タンザニア、グアテマラなど、
私たちがよく耳にする有名なコーヒーの産地は全てこのコーヒーベルトの範囲内に収まっています。
このコーヒーベルト以外でも、
小規模な農園やハウス栽培などで細々とコーヒー栽培を行っている農家は存在します。
しかし、大規模な自然栽培を行っている農園や、
複数の産地が集中しているような地域はほぼ皆無だと言ってよいでしょう。
コーヒーベルトのエリア内でも、地域によって微妙に気候や土壌などの条件が異なり、
育ちやすい品種や栽培方法などはそれぞれの産地によって異なります。
コーヒーの品種や産地による特徴などはLesson2で詳しく学習します。
コーヒーコラム
「珈琲」という漢字の由来はコーヒーチェリーから
かつて日本では「骨喜」や「架非」など、コーヒーに様々な漢字を当ててきましたが、
現在では「珈琲」で定着しています。
この「珈」の字は女性の赤い玉のついた髪飾りの意味があり、
また「琲」の字は珠をたくさんつなぎとめたもの、という意味があります。
これらはコーヒーノキに赤いコーヒーチェリーが実っている見た目に由来しています。
確かによく見るとコーヒーチェリーに似ていますね。
