Lesson11-1 コーヒーのフードペアリング・理論編

フードペアリングとは?

コーヒーにもワインとチーズのように、ぴったりの食べ合わせや
食材の組み合わせというものが存在します。

ワインとチーズでは「マリアージュ」という言葉を使いますが、
コーヒーではこれを「フードペアリング」と言います。

コーヒーとの相性がよいフードペアリングで、
代表的なものとしてまず最初に挙げられるのがスイーツです。
コーヒーとケーキなどは喫茶店でも定番の組み合わせです。
また、コーヒーとパンと卵料理もホテルの朝食としては定番の組み合わせとしてよく食べられています。

これらのフードペアリングには実は基本法則があり、
定番となる組み合わせには定番となるだけの理由があります。

Lesson13ではコーヒーとのフードペアリングの基本法則や
相性のよい組み合わせを学んでいきましょう。

 フードペアリングの基本・まず焙煎度を考慮に入れる

コーヒーの味わいの要素は主に「酸味」と「苦味」の2つがあり、
これらの味わいの違いがはっきり分かれるのが焙煎の工程です。
そこでフードペアリングの基本法則の一番として、焙煎度を考慮に入れることが重要になります。

moddangfire/Shutterstock.com/Adapted.
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浅煎りのコーヒー・・・酸味と相性が良いもの・ボリュームのあるもの

例えば浅煎りのコーヒーはまだ酸味が多く感じられ、
苦味やコーヒー独特の香ばしい風味はあまりありません。
また、浅煎りはアメリカンコーヒーなどによく使われ、あっさりしているので
量も大きなカップで多めに飲まれます。
そこで浅煎りのコーヒーには酸味と相性が良いもの
そして量もある程度はボリュームのあるものが適しています。

中煎りのコーヒー・・・シャープな酸味と苦味のバランスを崩さないもの

中煎りになると酸味がシャープになり、苦味やコーヒーらしい香りもたってきます。
合わせるフードもこのバランスを壊さない味わいのものが求められることになります。

深煎りのコーヒー・・・複雑な味わいに見合ったもの・濃厚なしっかりとした味わいのもの

深煎りのフルシティローストになると、苦味がメインになり、
酸味は微かに感じられる程度になります。
コーヒーの複雑な風味がもっとも感じられる焙煎度ですので、
この複雑な味わいに見合ったフードと合わせます。

深煎りもフレンチロースト以上になると、苦味とコクが全体を支配し、
味わいも濃いめなので飲む量も小さなカップで少量を飲むことになります。
合わせるフードもこのコーヒーの濃厚さに負けないしっかりとした味わいのものが合ってきます。

フードペアリング中級 ・同系統の味や香り、強さで合わせる

フードペアリングは似たような味や香り
または同程度の香味の強さのレベルで合わせていくことが基本となります。

例えば酸味に対しては酸味苦味に対しては苦味
または同程度の強さを持つ甘味を合わせることで、それぞれの美味しさを邪魔することなく、
味わいを引き立て合い、美味しさを増幅させることができます。

①酸味で合わせる

コーヒーの酸味にはフルーツを使ったスイーツが好相性を発揮しますが、
特に浅煎りのコーヒーにはフルーツタルトなどのようなフレッシュフルーツ、
中煎り以上のコーヒーにはアップルパイなどのような焼いたフルーツが
それぞれの風味を邪魔することなくマッチします。
また、柑橘系の酸味をもつコーヒーにはマーマレードなど、
柑橘系のフルーツを使ったスイーツを合わせるなど、
酸味の質も考慮にいれるとさらに奥深いフードペアリングが楽しめます。

コーヒーの酸味にはフルーツ

*浅煎り・・・フレッシュフルーツのタルト
*中煎り以上・・・アップルパイなど焼いたフルーツ
*柑橘系の酸味・・・マーマレードを使用したもの・・・など

②苦味で合わせる

苦いコーヒーと甘いスイーツはお互いを引き立て合う鉄壁の組み合わせとなります。
繊細な苦味を持つ浅煎りのコーヒーにはマドレーヌやクッキーなどのような
ソフトな甘さを持ったスイーツを、濃厚な苦味をもつ深煎りコーヒーには
生クリームやバターをたっぷり使ったコクのあるスイーツと、苦味の程度で合わせることで、
お互いの繊細さや強さを損なわず、味わいを高め合うフードペアリングが実現します。

また、同じ苦味でも、チョコレートのような苦味
ビターチョコレートを使ったスイーツと合わせたり、
豆を煎った香ばしさを感じさせる苦味には焼き菓子を合わせたり、
同じ質の苦味や香ばしさを合わせることで、舌の上で味わいが重なり合い、
コーヒーの微妙な味わいがはっきり感じられるようにもなります。

コーヒーの苦味に合わせたスイーツ

*浅煎りの繊細な苦味・・・ソフトな甘味のスイーツ(マドレーヌ・クッキーなど)
*深煎りの濃厚な苦味・・・濃厚でコクのあるスイーツ(生クリームやバターをたっぷり使用したもの)
*チョコレートのような苦味・・・ビターチョコレート系のスイーツ
*香ばしい苦味・・・焼き菓子

③同系統の素材や製造工程で合わせる

フードペアリングのコツとして、その素材や製造工程に注目するという考え方もあります。

例えばカカオ豆を焙煎したものが原料となっているチョコレート
コーヒーととても似た製造工程を踏んでいるので、コーヒーととても相性が良いのだと言えます。
そこで味の調整をしていない、カカオ100%のチョコレートは
よく焙煎された深煎りのコーヒーと絶妙なマッチングとなります。

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他にもカラメルは砂糖やクリームを熱して作られているので、
カラメルを使ったスイーツは、深煎りのコーヒーにミルクをたっぷり使ったカフェオレと好相性、
完熟のコーヒーチェリーで作られたコーヒーは、完熟のフルーツを使ったスイーツと好相性です。

この考え方をコーヒーの淹れ方にも適用すると、
コーヒーのオイル感がしっかり感じられるフレンチプレスで淹れたコーヒーは、
バターをたっぷり使ったケーキやパンのお供に最適です。

フードペアリング上級・香味の質を考慮に入れる

コーヒーペアリングで重要な「苦味」や「酸味」ですが、
コーヒー豆の産地や種類によって質の違いがあります。

例えば同じ酸味でも、柑橘系のような酸味もあれば、
ピーチのような酸味ベリー系の酸味青りんごのようなさわやかな酸味もあります。
苦味についても同様で、ビターチョコレートのような苦味もあれば、
豆を煎った香ばしさを感じさせる苦味もあります。

また、香りにもフローラルな香り甘い香りなど、様々な香りがあります。
(これらの香味(フレーバー)の特徴把握は詳しくはLesson12カッピングの修得で学習します)

ビターチョコレートのような苦味を持つコーヒーにはビターチョコレートが合いますし、
フローラルな香りを持つコーヒーには、はちみつを使ったスイーツやパン
ぴったりの好相性となります。

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これはコーヒーのフレーバーを把握する技術が必要となるため、
単純に焙煎度だけで合わせていくより上級技術となりますが、
このように香味の質を考慮に入れてさらに細かくフードペアリングを楽しめるのも
コーヒーの味わいの奥深い部分です。

このプロの実践技術はカフェでのメニューセレクトにも非常に役立ちます。

味わいの質の違いは、最初はコーヒー豆専門店などの解説文を参考にする、
カッピングで探っていくなど、様々な方法があります。

カッピングでコーヒーを探求していきながら、技術向上を目指しましょう。