Lesson1-5 コーヒーの製造工程③選別・出荷

選別

生豆に混入している異物や欠点豆を取り除きます。
作業は機械で行う場合と、手作業(ハンドピック)で行う場合とがあります。

その後、豆の大きさや味などをチェックされ、品質によってグレード分けされます。
豆のグレード分けの項目は各生産国によって異なりますので、次のLesson1-6で詳しく学習します。

weerawath.p/Shutterstock.com
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保管

精製した生豆は主に天然素材の麻袋などに詰められ、
出荷まで数ヶ月間から数年間、倉庫などで保管されます。

麻袋の利点は耐久性があり、積み上げやすく、風通しが良いことです。
しかし、風通しが良いということは、逆に外気に影響を受けやすいということでもあり、
倉庫は常に生豆を良好な状態に保つため、平均気温25度前後以下、湿度50〜60%の状態を維持します。

麻袋は生産国によって様々なデザインがあり、国名、輸送会社、ロットナンバーなどの情報が記載されています。

Jess Kraft/Shutterstock.com
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パーチメントコーヒー

外皮と果肉を取り除き、パーチメントがついた状態で乾燥させたものを「パーチメントコーヒー」と言います。
生豆の状態よりパーチメントコーヒーの方が傷みにくく保存性が高いので、
精製方法が水洗式などの場合はパーチメントコーヒーの状態で熟成保管され、
出荷直前に脱殻して初めて生豆にします。

コーヒー販売業者によっては自社で脱殻機を導入し、
パーチメントコーヒーの状態でコーヒー豆を輸入しているところもあります。

オールドクロップとニュークロップ

生豆を倉庫で数ヶ月もの期間保管することで、
精製したばかりの生豆を熟成させて青臭さを取り除き、香味を安定させる役割があります。
さらに年月を経て、生豆は薄緑色から茶褐色に変化していき、
味は角がとれてマイルドになっていきます。

こうして3年以上に渡って寝かせたものを「オールドクロップ」と言います。
(クロップとは収穫物の意味)
これに対して、その年度内に収穫した生豆を「ニュークロップ」、
前年度に収穫した生豆を「パストクロップ」と言います。

愛好家に好まれるオールドクロップ

オールドクロップには数十年もの長期間に渡って熟成したものもあり、
愛好家にとっては貴重な逸品として扱われます。
90年代まではオールドクロップが盛んに輸入され、
現在もマイルドで落ち着いた味わいを好むオールドクロップ派と、
より風味の輪郭がはっきりしたニュークロップ派の間で
どちらのコーヒーが優れているか議論になることもしばしばあります。

しかしコーヒー豆は古ければ古いほど良いというものではなく、
オールドクロップの中には角が取れすぎて
逆に味気ないコーヒーになってしまっているものもあります。

コーヒー豆熟成の特徴と現代の主流となるニュークロップ

基本的にコーヒー豆の熟成は、
肉やチーズなどの食物の熟成とは科学的に起きている現象が異なります。

肉やチーズの熟成時は、タンパク質や脂質などの成分が酵素によって分解され、
アミノ酸などの旨味要素が増えて美味しくなっていくのに対して、
コーヒー豆の熟成は単に時とともにクロロゲン酸や小糖類などの香味の元になる成分が減少し、
味が薄くなっていくだけのことなのです。

生豆の熟成は個性が強すぎるコーヒーの風味を安定させるには有効で、
またオールドクロップは水分がほどよく抜けて火の通りが良く、
煎りムラなく焙煎しやすいという利点もありますが、
スペシャルティコーヒーが台頭し、コーヒー豆の個性が尊重されるようになった現在では、
ニュークロップこそが市場の主流だと言えます。

出荷

最終的な精製と熟成が終わったコーヒーは、生産国から国内、国外へと輸送されます。
海外の場合は主に船便が使用されています。

倉庫で湿度や温度を厳しく管理されていた生豆も、輸送中に品質が劣化することがあり、
最近では冷凍コンテナや真空パックで送る輸送会社も出てきています。

また、麻袋より外気の影響を受けにくい新しい素材も開発されていますが、
まだ広く普及するには至っていません。

変わったケースとして、ブルーマウンテンなどは樽で輸送されています。

コーヒーコラム

コーヒー農家はどの工程までやっている?

これまでコーヒーの生産工程を紹介してきましたが、
コーヒーの栽培を行っている農家は、これらの工程のどこまで携わっているのでしょうか?

これは生産地域の環境や歴史的背景などによって様々なケースがありますが、
主に農家の規模に大きく関係します。

精製方法がウォッシュトやセミウォッシュトの場合は設備が必要になりますので、
小規模な農家はできません。
コーヒーチェリーを収穫したら、後は精製処理工場を持つ業者に売り渡して
そこまでというところがほとんどです。
これが少し規模の大きな農家になると、パーチメントにするまでは自前でやって、
後は脱殻業者に任せるというところが出てきます。

完全な生豆にするまで自前で行う農家はほんのひと握りの大規模農園に限られます。
数は少なくなりますが、企業化が進んでいる農園では輸出まで手掛けているところもあります。

ナチュラル精製を採用している地域では、小さな農家でも自前で処理するところが多くなりますが、
小規模な農家は生産量が少ないので、これらの小規模な農家の豆をひとつに集めて販売する
企業のロットは品質にばらつきが多くなります。

そこで最近増えているのが、小規模な農家が共同で出資し、
共同精製処理場(ウォッシングステーションなどと呼ばれる)を設けるケースです。
これによってそれまでのナチュラル精製から
ウォッシュト精製に切り替える地域が増えています。
また、コーヒー豆の品質が安定かつ向上し、農協製コーヒーとして
生産者の顔がより見えやすい形での流通が可能になっています。

アフリカ産のコーヒー豆などは農協名がそのままコーヒー豆の銘柄として販売され、
スペシャルティコーヒーとして注目されています。