Lesson7-5 サスティナブルコーヒー

サステイナビリティ

トレーサビリティとよく似た言葉に、サスティナビリティがあります。
トレーサビリティとは異なりスペシャルティコーヒーの評価基準には含まれませんが、
スペシャルティコーヒーの登場により意識されるようになった概念の一つです。

サスティナビリティとは

サスティナブルとは「持続可能な」という意味であり、
もともとは「環境を損なわずに生産を維持すること」を意味するものです。

自然界にもともとある森林を破壊して農場を作ったり、農薬などの使用により
環境を破壊しながらの生産活動は、環境に負担をかけるものであり持続可能性が高いとは言えません。
限りある地球資源が意識されるようになったことで、自然環境の保護や維持が重視されています。

経済面でのサスティナビリティ

また、この環境保護の観点と合わせて、近年は
「生産者の生活を考慮し、持続可能な農業を行えるよう生活向上を目指す」という
経済面での持続可能性的概念も重視されるようになってきました。

コーヒー生産国のほとんどが途上国であり、世界でも最も美しい自然を持つ国々である一方で、
貧困国でもあります。
これまでは貧しい生産国からコーヒーなどの原料を安く買い叩いていた状況でしたが、
それでは「持続可能な」農業や生産活動を行いながら生活することが難しい現実がありました。

現在ではこのサスティナビリティの概念の広がりにより、業界全体が、
高品質の豆は高くても継続的に買う方向にシフトしつつあり、関わる人全てが繁栄できる、
経済面でのサスティナビリティも重要視されています。

具体的には、有機コーヒーや認証コーヒー、フェアトレードコーヒーなど、
産地の環境や生産者の生活を守りつつ美味しいコーヒをつくる取り組みが行われています。

American Center Mumbai出典: www.flickr.com
American Center Mumbai出典: www.flickr.com

サスティナブルコーヒー

「持続可能な」と意味するサスティナブルの考え方を元に生産されているコーヒは
サスティナブルコーヒーと言われます。

サスティナブルコーヒーは、環境保護や生産者たちの生活をも守ることを目的として
活動している団体により認証されているものもあり、これは認証コーヒーと呼ばれます。

その中の基準には、有機栽培による生産の有機コーヒーや、
環境保全の一環として採用されているシェードコーヒー、
生産国の発展と人々を守るフェアトレードコーヒーなどがあります。

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有機コーヒー

健康志向ブームにのって広がっているのが、化学肥料や農薬を使わない有機コーヒーです。
サスティナブルコーヒーのなかで唯一日本の法律の元で与えられる認証でもあります。
厳しいJAS基準をクリアしたもののみ、農林水産省から許可を受けて初めて
「有機コーヒー」の呼び名で販売可能となります。

化学肥料や農薬を使わないで生産されるため安全性は高く、健康志向の方向きのコーヒーです。
有機コーヒーは栽培法の基準ですので、コーヒーの味やおいしさの基準とは異なるものとなります。

  • 最初の収穫までの3年間以上、化学肥料や除草剤、殺虫剤などの農薬を使用していないことが前提。
  • サスティナブル珈琲のなかで唯一日本の法律の元で与えられる認証。
  • 日本農林規格(JAS)協会の規格をクリアした場合のみ表示できる。

シェードコーヒー(森林保全コーヒー)

シェードコーヒーの「シェード」とは、直射日光を嫌うコーヒーのために
農園に植えられるシェードツリーからきています。

コーヒー栽培には、シェードグロウン(木陰栽培)とサングロウン(直射日光栽培)とがあり、
もともと直射日光を嫌うコーヒーの栽培には、シェードグロウンが用いられていました。
しかし、近代では低コストで大量生産を行うためのプランテーション経営が増えたことにより、
機械化農業のためにシェードツリーが伐採されている現状があります。

コーヒー栽培のために植えられていたシェードツリーですが、
森林に近い木陰を作り出す木々は実は森林保全、そこに住む動植物の生態系の保護にも繋がり、
動植物の多様性にも貢献しているということで、この栽培を促進する動きがあり、
シェードグロウンで栽培されたコーヒーはサスティナブルコーヒーとして認証の対象となっています。

  • シェードツリーがあることでと光合成のスピードが緩やかとなり、化学肥料が不要、もしくは最小限に抑えられる。
  • シェードツリーがあることで、野鳥をはじめ生物の多様性にも繋がり、自然と共存しながらコーヒー栽培が可能となる。

フェアトレードコーヒー

フェアトレードとは、いわゆる公正取引のことです。

先進国が途上国からの輸出品に対して最低買い付け金額を保証するなど、
公正な取引となるような取り組みが世界的に進められており、
フェアトレードはコーヒーだけでなく多くの製品に適応されはじめています。

コーヒーに関しては、認証コーヒー生産国である発展途上国から先進国への輸出に対して、
最低価格を設定しています。
これにより生産者は安心してコーヒーを作ることができ、
途上国の発展と生活の安全に寄与できる点において大きな変化となりました。

ただしフェアトレードに関しては、
COEのように高品質であれば価格が上がるようなプログラムがない点や、
これによりかえって弱者を固定してしまうのではないかという反対派の意見も存在します。

サスティナブルコーヒーの認証団体

グッドインサイド

オランダに本部を構えるグッドインサイドは、コーヒーやカカオ、茶類などの持続可能な農業や
生産者の生活向上、環境への配慮や優れた農作物を栽培への取り組みを中心に活動しています。

下記のような多面的で厳格な基準により
サスティナブルコーヒーの認証も行っている国際認証プログラム団体です。

  • 生産者の労働条件
  • 農薬管理の徹底
  • 生産履歴の明示

レインフォレスト・アライアンス

Rain forest allaiance website

レインフォレスト・アライアンスは、生物多様性の保護と、
人々の持続可能な生活の確保を目指してとして活動している、国際的な非営利団体です。

かえるのマークが目印で、コーヒー以外にも様々なものにも承認、検査、適合審査
などを行っています。

  • 地球環境保護を目的としている
  • 森林と生物の多様性の保護
  • 労働者の権利の保護

バードフレンドリー

バードフレンドリー website

1990年代後半、渡り鳥の現象の調査研究、保護のために設立された
「スミソニアン渡り鳥センター」に端を発します。
様々な研究者によりシェードツリーを用いたシェードグロウンにより
コーヒー農園が渡り鳥の生息地になっていることを発見、
それによりバードフレンドリプログラムが始まりました。

バードフレンドリーはシェードグロウンかつ有機栽培で育てられたコーヒーを
プレミアム価格で買い取るプログラムです。
これにより、生産農家の生活や環境、渡り鳥の保護を行うことができます。

  • シェードグロウンを推奨、森林伐採を防ぐことを目的とする。
  • 渡り鳥の保護にも繋がる。
  • 森林の木陰を利用してコーヒー栽培を行っている生産者に対して、プレミアム価格でコーヒーを買い取る