コーヒー豆をブレンドする
スペシャルティコーヒーやサードウェーブコーヒーの流行により、
単一豆や農場による特徴をストレートで味わう楽しみ方が広がりを見せてきました。
しかし、ブレンドコーヒーには、これらの他の楽しみ方とはまた違った魅力が多くあります。
ここでは、コーヒーの世界を更に広げるブレンドの知識と技術を修得しましょう。
また、カフェや専門店開業にもブレンド技術は欠かせないものとなります。

ブレンドは主に2つに分けられる
コーヒー豆のブレンドには基本理論がありますが、
単一個別のブレンドは無数にあり、それぞれお店やビーンズショップのこだわりがあります。
自由度の高いブレンドですが、その配合方法は大きく分けると2つに分けられます。
- 主役を作るブレンド
- ブレンドする豆全体のバランスをとって完成させるブレンド
主役を作るブレンド
これは、主役となる豆をまず最初に決定し、その特徴を活かしながら、
足りない要素をプラスして全体のまとまりを作るブレンド方法です。
主役となる豆は、固有の特徴を持っていたり、突出した風味や味を持っていたりと、
魅力的ではあるけれども人によっては好き嫌いが分かれる豆などが使用されます。
ストレートでは好みが分かれるものでも、ブレンドすることにより欠けている要素が補われ、
多くの人が飲みやすい味となります。
反対に、豆が持つ特出した特徴を生かすことで、好き嫌いがはっきり出るけれど、
好きな人にとってはたまらない、といったブレンドを作ることもできます。
ブレンドする豆全体のバランスをとって完成させるブレンド
こちらは一つの豆の特徴を強く出さず、
ブレンドする豆同士のバランスを中心に考え、完成させるブレンドです。
突出した特徴がないものでも、ブレンドすることで全体のバランスで美味しさを引き出し、
誰にでも受け入れやすいブレンドに仕上げることができます。
多くの人に飲みやすいブレンドが求められる量販店販売用のブレンドや、
コーヒーショップで誰にでもお勧めしやすい定番ブレンドを作る際には、
このような配合方法が適しています。
専門店やプロが行うブレンドの目的
種類の異なる豆を組み合せて行うコーヒーのブレンドには、新しい味をつくり出せることはもちろん、その他にも様々な目的の為に行われます。
また、この目的は専門店が行うのか、楽しみのためにホームブレンドを行うのかでも変わってきます。

専門店やプロのブレンドの目的
- お店やビーンズショップの独自性を出し、店の「顔」をつくるため
- 価格を安定させるため
- 多くの人に好かれる味を作るため
- 単一のコーヒーでは出せない味をつくりだすため・・・・など
①お店やビーンズショップの独自性を出し、店の「顔」とするため
他のショップでは手に入らない、この店でないと飲めない独自性のあるブレンドは、
その店の顔となります。
独自のブレンドを楽しむために来てくれるお客様が増えることは、ファンづくりにも役立ちます。
お店の顔とするためには、いつでも一定の味を提供しなければなりません。
単一豆をお店の顔にしてしまうと、栽培や生産量の関係で安定して仕入れが出来ない場合に、
楽しみにして来店してくれたお客様に提供できない可能性が考えられます。
その点、ブレンドを行うことで安定していつでも同じ味を提供することができ、
さらに「このお店といえばこのコーヒー」という顔となるコーヒーをつくり出すことができます。
②価格を安定させるため
専門店やカフェとしては、お店を運営するために経営的視点も大切です。
ブレンドは、原価の調整のために行うという一面も持ちます。
美味しいブレンドコーヒーを作る際に、全て希少価値の高い高価格な豆を使用する必要はありません。それぞれの特性を活かし、高い豆に安い豆をブレンドすることで、
手に入れやすい価格で多くの人に楽しんでもらえるコーヒーを商品化し、
安定して供給することができるようになります。
③多くの人に好かれる味を作るため
飲みやすく誰もが美味しいと思えるコーヒーは、
単一豆よりもブレンドコーヒーが適している場合もあります。
単一豆をストレートで飲むと、特徴や癖などが強く、好みが分かれる場合もあります。
ブレンドすることで、欠点などを抑えたり、よい特性をより引き出すことができます。
④単一のコーヒーでは出せない味をつくるため
単一の豆でも複雑な表情を見せるコーヒーですが、
それぞれの特性を組み合せることでその可能性はさらに広がります。
華やかさを相乗効果でより高めることも、甘味を活かすフレーバーを組み合せることも、
苦みに深みを出す事も、ブレンドを行うことで可能となり、
単一豆のコーヒーでは出せない味をつくり出せることも、ブレンドの魅力です。
プロのブレンドには高い技術が必要
専門店やプロが行うブレンドでは、いつでも同じ味を作ることが重要となります。
店の顔が飲む度に味が変化するのでは、「顔」として看板にすることはできません。
この「いつでも安定した味のブレンド」には、高い技術が必要となります。
農作物であるコーヒーは、年間を通して、また年度を跨いで、
いつでも同じ品質であるとは限りません。
またいつでも同じ品種の豆を同じ量安定して仕入れられるとは限りません。
そのような場合には、似たテイストの豆に変えたり、配合を変更することで、
いつでも同じ味を作り出す技術が重要となるのです。

安定した味作りのために
農作物であるコーヒーをいつでも安定した味で提供するためには、
ブレンドするための豆のチョイスにポイントがあります。
開業を視野に入れている場合には、下記の点に注目してブレンドを作ってみましょう。
- 収穫時期が異なる豆をいくつか配合する
- 通年で安定した収穫量のあるものをベースにする(例:コロンビアなど)
- 収穫後時間が経過し、味の変化が少なくなったものでまとめる
- ベースとなる豆の味を安定させるために、生豆を定温で輸送、保管する・・・など
販売方法による重要視するポイントの違い
専門店やプロのブレンド、と一言でまとめても、それぞれの販売方法や
お客様が求めるものによってブレンドでも重視するポイントが変わってきます。
量販店向けのブレンド
多くの人が手にする量販店で販売するためには、価格が重要な要素となります。
そのためブレンドでも、低価格の豆をベースとしてコストパフォーマンスをあげた上で、
美味しくまとめることが重要視されています。
対面販売でのブレンド
実際にコーヒーの状態を確認しながら販売している対面販売点では、見栄えが重要な要素となります。そのため、大粒の豆をチョイスしたり、見た目に色ムラがでないようにするために
焙煎度をそろえるなどの工夫が必要となります。
幅広く多くの知識が必要となるプロのブレンド
これらのことを考慮してブレンドを行っているのがプロのコーヒーブレンディングです。
そのためには多くの知識が必要となります。
- 生豆に対する知識・・・生産国や生産時期、味や特性など
- 焙煎豆に対する知識・・・豆に合わせた焙煎方法、焙煎度の違いによる変化など
- 市場に対する知識・・・価格の安定や供給量、今後の市場価格の変動など
- 包装や保存方法に対する知識・・・ブレンド豆に最適な包装や保存方法など
- 表示に関わる食品衛生法やJAS法、計量法、景品表示法などの法律に対する知識・・・ブレンドした豆のネーミングに関わる表示法の知識、商品かする際の表示に関する知識など
ホームブレンドの目的・楽しみ方
経営の視点や様々な要因を考慮して行う必要があるプロのブレンドに対して、
純粋に味の追求を行ったり、好みを探したりと、
楽しみながらレベルアップ出来るのがホームブレンドの魅力です。

ホームブレンドの目的・楽しみ方
- 好みの味を追求できる
- 偶然の産物に出会える
- コーヒーの知識が深まる
- 身近な人に喜んでもらえる
好みの味を追求できる
自分の好みが把握できてきたら、その好みを追求し、自分だけのブレンドを作る事が出来ます。
市販されているものの多くは、万人受けするために個性や特徴をマイルドにしている傾向があります。この酸味が好き、深い苦みが好き、このフレーバーが好き、など、
自分の好みを追求することができることがホームブレンドの大きな魅力です。
偶然の産物に出会える
最初は試行錯誤するブレンディングですが、
新しい味に出会うための楽しみのステップととらえてみましょう。
その試行錯誤の末に思いがけない出会いと、新しい好み、味の発見があることも
ホームブレンドの楽しみのひとつです。自由な発想と偶然も大切にしましょう。
コーヒーの知識が深まる
ブレンドを行うためには、ある程度の知識が必要となります。
なんとなく暗記していては頭に入りにくい事でも、
「オリジナルブレンドを作る」という明確な目的があれば学びにも力が入り、
ブレンドを実際に行うことで、得た知識がさらに深まっていくという相乗効果が生まれます。
クリエイティブかつ知的な遊びとしての要素を持つ大人の趣味としても、充実した時間が過ごせます。
